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単行本



サンダース宮松敬子著
(Keiko Miyamatsu Saunders)
教育史料出版会:2005年4月15日 発行 ISBN4−87652−456−4
定価:(214頁)2415円(税込み)


保守党の動議否決

2005年7月カナダは、長い間懸案だった「同性婚法案」を国として成立させた。言うまでもなく、これは男女の間のみに可能だった「結婚」の定義を「同性同士」にも可能にした法律である。

つまり男性同士、女性同士でもその意思があれば、異性間の結婚と同じ法律を行使できると言うものだ。
カナダはオランダ、ベルギー、スペインに次いで世界で第4番目の国である。

しかし2006年1月に行われた連邦総選挙で、自由党が負けたことにより、この法案のゆくえが懸念されていた。
理由は、少数派ながら自由党からその政権の座を奪った保守政党のキャンペーン公約の一つが、この法案の見直しであったからだ。

メディアを始め国民の多くも、すでに決まった法案を再び俎上に載せることには懐疑的であった。
だが同法案に強く反対し続けているファンデメンタルの宗教関係者や、結婚は男女の間のみに成立するとする右派グループの活動により、政治家たちは大きく揺れ動いていた。

もちろん議員の中にも同法案に反対する人々はかなりの数いて、その考えが選挙区で支持され当選した政治家もいる。

そこで保守派の党首であるハーパー首相は、この法案を再開し、再度国会で自由投票を行うべきかどうかについての動議を2006年12月7日議会に提出した。

その結果は反対・賛成が175対123で否決された。
これによって同法案は永久に法律として成立したとみなされ、今後この件に関し再び国会で審議されることは無いと決まった。

しかし反対者たちは黙っていない。
結婚は「アダムとイブ」の間のみに可能であって「アダムとスティーブ」の関係はありえないとする人々は、「今後も草の根の運動を通して反対し続ける」と意気込んでいる。アメリカの反対運動の活動家も大いに力を貸している。

あるカトリックの神父は、この18年間季節や天候に関係なくオタワの国会議事堂の前で「妊娠中絶」「同性婚」反対を叫び続けており、月〜木曜日は6時間15分、金曜日は3時間15分プラカードをもってデモを行っている。

今後こうした根強い反対者たちがどのような運動を展開するかは未知であるものの、一応同法案は終止符が打たれたことになる。



オンタリオ州内で同棲している同性カップルの法的保護に関する私の記事が、初めて日本経済新聞に掲載されてから11年。
その後ずっとこの問題を追い続け、拙著を書たくめの取材を開始してから上梓まで3年4ヶ月。

ここに出版のお知らせを掲載出来ることが信じられない。それが今の私の正直な気持ちである。

一歩また一歩。それはまさにゲイライツ運動と比例して牛歩のごとくであった。

だが着実にその歩みは進められ、私は拙著を世に送り出すことができ、世界は同性婚に向けていま大きな潮流を創りつつある。

公民権運動のはしりと共に始まったゲイライツ運動。彼らの歴史から「人権とは何か。人権を勝ち取るとはどういうことなのか」を学んでいただけたら本望である。

カナダは6月に迫る同性婚法成立に向けて、いま賛否両論が渦巻いている。
どのような結論が出るのか見守って行きたい。



目 次
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プロローグ

序章:二人のマイケル――ゲイ・カップルの・アクテイビスト

一章:国の取り組み

二章:学校の取り組み

三章:メディアの取り組み

四章:教会の取り組み

五章:親のサポート・グループ

六章:普通に暮らす人々

七章:北米に住むマイノリティの同性愛者たち

八章:オランダの実情

追記

エピローグ

部分抜粋
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≪プロローグ≫より
(前略)
わたしがカナダのゲイ・ムーブメントという、ある意味で特殊な領域になぜ強い関心を持ったのかにはいろいろな理由がある。
(中略)

今から約10年前の94年、それまで10年ほど勤めていた日本経済新聞トロント支局がバブル崩壊のあおりで閉鎖になったおりに、フリーランス・ライターとなる決心をしたときに始まる。
(中略)

この間に私は、文章がもたらす影響力というものを十分に知り、その魅力にとりつかれたのである。
幸いにフリーランスとして最初に書いた記事が、古巣の日経で取り上げられ、同年6月22日付け夕刊の婦人家庭欄(今は「生活家庭欄」)に載った。
これはオンタリオ州内で同棲している同性カップルの法的保護に関するもので「法制化、認知進まず―厚い道徳の壁」と題された。
(中略)

カナダはたしかに「人権」という問題には鋭敏ではあるが、ここは決してパラダイスではない。この国もご多分に漏れず大きな問題を幾つも抱えている。
子供の貧困、町にあふれるホームレス、都会の空気汚染、教育資金不足、高齢者人口の増加に伴うヘルスケアの問題、地位ある公人の汚職などなど、数え上げたらきりがない。
だが、各個人が快適に住むための正当な権利に対する人々のマインドは、かなり先端を行っていると言える。
その形が目に見えて端的に現れているのが、同性愛者に対する権利の保障である。
(後略)


≪第1章 国の取り組み≫より
(前略)
私は常々「同性愛者の権利」を社会問題として、公的な場できちんと語ることができる国は、バランスの取れた社会を形成している証拠と考えている。
そうした姿勢を持つ国は、精神的な先進国だと言っても過言ではないだろう。なぜならこの問題ははっきり言って、一般国民のその日の暮らしに必要なものではない。
これを語らずにいても国は衰退しないのだ。例えば人々が日々の生活で精いっぱいの国であれば、それは「考えも及ばない問題」であり、また宗教や独裁者などによって国民の思想統一を図る国であれば、それは「とんでもないゆゆしき問題」となる。
事実カナダの同性婚反対派の中にも、もっと経済立て直しなどの重要問題があるのではないか、との声は頻繁に聞かれる。
(後略)


≪第7章 北米に住むマイノリティの同性愛者たち≫より
―マイクと広也の物語―
(前略)
僕とマイクがNYに居を移して何年か過ぎてから、僕は家族に再度手紙を出さなければなりませんでした。それは皆の口から「そろそろ日本に戻って来たら?」というような言葉を聞くようになっていたからです。

最初のカミングアウトからかなり日が経っていましたし、やはり大方の人にとっては、基本的にはゲイなどの問題には出来れば触れたくない、認めたくないという思いがあるようです。彼らを責めることは出来ませんが、僕は生きて行く上で、ゲイであるが故に避けて通れない困難や誤解が厳然としてあるという事実を、忘れてもらっては困ると思い、姉にもう一度手紙を書きました。

「お姉さん、あなたはこれまでいかに自分が幸せに生きてこられたか考えたことがあるしょうか。結婚後彼の住むところに移り住み、その事を今だかつて誰かに責められたことがありますか?ひるがえって僕の場合、マイクとアメリカに一緒にいること自体、周りに祝福されるどころか理解さえしてもらえない。今のところアメリカでは、日本と同様に同性者同士の結婚は法的に認められていません。しかしそれが可能になったら二人は手続きをするつもりです。そこまで僕たちは真剣だし、別に好き勝手に暮らすためにアメリカに住んでいるわけではないのです」。この手紙以後、家族は僕がアメリカにいることを咎めたり、疑問を投げかけてくることをしなくなりました。
(後略)


≪追記≫より
振り返ってみれば、いま先進国と呼ばれる国々においても「女性問題」などが歯牙にもかけられなかった時代があった。
「人権」という広大な領域の中にある「同性婚」の問題も時間と忍耐、そして何よりも前に向けて歩くたゆまぬ努力が必要のようだ。
カナダも半世紀余り前には、日系カナダ人に選挙権はなく、他民族との結婚もできなかった。多様文化主義を国策とする今では想像することさえ難しい。


読者からの感想
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Y.T.(日本):

〜前略〜

「カナダのセクシュアル・マイノリティたち」を読み、初めて日本からお便りいたします。
私はこの1月から、カナダのライアソン大学(トロント市)の通信教育のオンラインコースをとり、勉強を始めたばかりの者です。

科目は「家族問題」で、英語の読み書きにすごく時間がかかるので、課題についていけるか自信がないのですが、家族の多様性、社会の中での家族、エコロジカルな視点を理解する、 家族支援者として重要である自分の価値観に気がつく、というこの科目の最初に出されている1週目の課題の文献が10あって、そのうちの2つがレズビアンとゲイについてのものでした。

〜中略〜

家族支援を勉強するコースの一番の基礎科目のいきなり最初に、レズビアンとゲイの文献がくる!、というのに、ちょっと驚きましたが、宮松さんの本を読んで、この問題がいかに 家族・社会・個人といういろんな面から考えさせてくれるトピックであるか納得ができましたし、また、日本では考えつきそうにないような発想で家族支援がされている、ということを知ることもできました。

そんな個人的な事情で日本語でカナダの事情が読めたことに、とても感謝しており、それだけでもお伝えしたいと思いメールをいたしました。

〜後略〜


〜*〜*〜*〜

これに対し私が出したお礼のメールの返事を受けて、又以下のようなご返事を頂いた。
長い年月を掛けて上梓した本が、こうした方面の方の役にも立ったことがことさら嬉しい。
その嬉しさを伝えたく、久しぶりに教育史料出版社の中村早苗編集長にメールを送ってしまったほどだ。

そして中村編集長からも次のようなメールを頂いた:

〜前略〜
今回のお便りのようなかたちで、本がお役に立ったことは、出版社にとっても、ほんとうにうれしいことです。
この方はきっと将来、いいお仕事をしてくださることでしょう。良書を出し、読者の求めに応じられるように残していくことは、出版社の使命だなあ、とあらためて考えたことです。
〜後略〜

〜*〜*〜*〜



以下Y.T.さんからの2回目のメール:


〜前略〜

私が本を読んでびっくりしたのは、本に書かれている内容だけでなく、カナダ在住でこんな本を書いている人がいる、という驚きと、自分が勉強する内容のこと、日本語で読めてよかったという感謝でした。

なんで、こんな本(専門書とか論文なんかとかでなくて一般書)が存在してくれていたんだろうか、という、苦しいときの光というか・・・・。

先日、英語のコースリーディンの最初の方をやっと読みおえたのですが、英語力の弱い私がいきなり読んでも、たぶん内容がよくわかんなかったと思います。


たぶん、宮松さんの本を読んでいなければ、「クローゼット」って言われても、きっと????だったと思うし、法律や権利につての戦いの道のり、それから、メンターのプログラムなんかも英語だけでは理解ができなかったでしょう!!!





Y.S.(トロント):

おもしろかった!!!

文句なしに面白かったです。素晴らしい本ですね。
ここ2日間掛けて読了しました。
御高著に目を落としていない時も、私の頭の中は「人権問題」でいっぱいになったほどに「読ませる」本でした。

カナダに住んでいて、新聞などで同性愛者に関するニュースを英語で見聞きしていても、一歩一歩押し進めている彼らの地道な活動や体験談などは皆目分からないのも同然でした。
こうして日本語であらゆる角度からのそれはそれは詳しいレポートを読んで、初めて理解できた次第です。
彼らの数々の苦労や体験が手に取るように見えて、途中何度も泣いてしまいました。

同性愛者のみにとどまらず、すべてのマイノリティに対する偏見・差別をなくし平等であるべきだ、という著者の願いが読み取れるこの本はすべての人の必読書と言えるでしょう。

御高著に感謝いたします。


T.A.(トロント):
〜前略〜

御本を(日本に行く)飛行機の中で読破して、メロメロに何度も泣かされました。
淡々と抑制された筆致で書いていらっしゃるので、却って現場レポートの所など息を呑む思いにさせられます。

I was in tears many times reading the newly published book by my friend Keiko, Sexual Minority in Canada. The efforts, struggles and accomplishments of gay community and Canadians! Very moving. The book made me aware that we have really interesting history, we are living in a special city, and in the absolute middle of them.
パートナーのジョーンに先ほど書き送ったメモの一部です。

大変なご努力の賜物は、特にゲイの日本人とその周囲の人達にとって、そして、全人類の為にこれは立派な贈り物だと、著者に一言お礼を申し上げたくなりました。

ありがとうございます。


S.S.(トロント):
貴女のすばらしい力作に心から敬意と賞賛をおくります。

よくもまあ調べ上げ書きつづったものですね。
硬い内容で一見取り付きにくいですが読み始めると引き込まれて読み進んでいくのは、あなたの筆力のせいでしょう。

読み終えてしかし理解度が深まったかというと、感覚的には依然不可解というところです。


A.M.(東京):
〜前略〜

断片的な情報しかもっていなかったカナダの同性婚について、くまなく教えていただいた感じです。まさしく決定版!ですね。

カナダだけでなく、オランダの例もとても勉強になりました。

また、宮松さんご自身のスタンスをはっきり明言されていることも、とてもいいと思いますし、同性婚問題が同性愛者だけの問題ではない、という事実も、うまく表現されていると思いました。

〜後略〜


H.C.(トロント):
〜前略〜

御著書は想像に違わず力作ですね。

何人ものチームでも大変な作業と思われる内容を、長年にわたってお一人でやり通されたのですから感嘆しました。
歴史を洞察する客観性と、情におぼれず、対象者の心情を深いところですくい上げる人間性と、その両面のバランスを取りながらの作業は大変なこと。
敬子さんならではの御著書と感じ入りました。日本語だけではもったいない。英文にして、カナダはもちろんのこと、世界中の人に読まれるべきだと思いました。

”世の中に知らせたい”というジャーナリストとしての敬子さんの真骨頂が、そこここにあふれています。読者は著者に感謝しつつ、何度もこの本を手に取ることでしょう。

〜後略〜

J.F.(東京):
宮松さん、新規出版おめでとう御座います。

セクシュアルマイノリティーと言うのは日本ではそれほど社会的な問題にはなっていませんが、西欧ではやはり重要な問題なのでしょうね。
アメリカなどでは同性婚を認める州なども増えてきていますし...。
個人的にはそんなのは気持ちが悪いだけですが...。

お元気でご活躍なさっている事を嬉しく思います。 これからも益々のご発展をお祈りしております。

  〜後略〜

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